10月度最優秀ハイレゾ音源大賞作品

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『Neo Yankees’ Holiday(24bit/96kHz)』
Fishmans

配信日

2016年10月19日

配信ページ

http://mora.jp/package/43000006/00602547970572/

大山卓也(ナタリー 前編集長)

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今まで全然気にしてなかったけど、こういうアレンジや奥行きで音が鳴ってるんだなってことを再確認しましたね

──普段、ハイレゾで音楽は聴かれますか?

大山卓也(以下、大山) : いや、そんなに聴かないんですよ。だから、今日どうしようかなと思って(笑)。

──でもナタリーもハイレゾの企画をはじめましたよね?

大山 : そう。ちょうどこの10月から「いい音で音楽を」っていう特集企画を立ち上げて、いろんなアーティストたちにハイレゾ音源を聴いてもらったり、普段より良いヘッドフォンを使ってもらったり、あと音響メーカーさん一推しの製品を教えていただいて紹介したりしています。

──今日はぜひ率直な意見を伺えたらと思っています。今回、4アーティストのアルバムを聴いてもらいましたが、いかがでしたか?

2016年10月度各サイト推薦作品

大山 : 前回坂本龍一さんもおっしゃってましたけど、「ハイレゾ音源大賞」と言っても音質や録音だけで選ぶのは難しいですよね。それでいうと、やっぱりフィッシュマンズはCDで何百回と聴いているアルバムで思い入れも強いので、それがハイレゾだとこうなるんだっていう新鮮な驚きがありました。

──ハイレゾで聴くとどうでしたか?

大山 : 聴こえなかった音が聴こえてくるなと思いました。普段聴き慣れている曲ばかりだからこそ、「あれ、ここでこんな音が鳴ってたんだ?」って。CDでもう一度聴いてみたら確かに奥のほうで鳴ってるんですよ。今まで全然気にしてなかったけど、こういうアレンジや奥行きで音が鳴ってるんだなってことを再確認しましたね。チリチリとしたノイズ的な音や、音の中のざらついた部分がざらついたまま聴こえるのがすごく新鮮でした。もちろん音の分離がいいのはハイレゾ音源では当然なのかもしれないけど、綺麗な音が綺麗なまま聴こえるだけじゃないんだっていう。それは他の音源でも同じで、ノラ・ジョーンズも例えばギターの弦が擦れるときのノイズとか、CDやMP3だとあまり気にしなかったところが立ち上がってくる感じが面白かったですね。

──他のアルバムはいかがでしたか?

大山 : Akiyoshi Yasudaはハイレゾっぽい。

──それはどういうことでしょう?

大山 : サウンド自体が一番ハイファイな感じがしたので、音の良さをすごく実感しましたね。逆に言うとノラ・ジョーンズや木村カエラは、ハイレゾの面白さもあるんですが、サウンドやアレンジの生っぽさやラフな部分が魅力的で、もしかしたらカセットテープで聴いてもかっこいいんじゃないかみたいな勢いを感じました。

──なるほど。

大山 : ハイレゾというと「ハイファイでクリアな音」ってイメージが強かったり、アピールされがちだったりすると思うんですけど、むしろラフな部分とかざらついた部分こそがハイレゾで面白く聴こえるのかもっていうことが今回の発見でした。

──いま、リスニング環境は変革期だと思うんです。依然としてCDが売れている中で、ハイレゾを広めたいと言ってる人たちもいれば、アナログの復興やストリーミングサービスの台頭があって。

大山 : 僕、普段はわりとMP3で音楽を聴くことが多いんです。手軽で使い勝手がいいというところが大きいんですけど、でも例えばこのアーティストのこのアルバムはハイレゾで聴きたいなとか、これはアナログで聴きたいよなとか、それは作品によって変わるだろうし、同じ作品でも自分の気分やコンディションによって変わるかもしれないから、選択肢が増えるのがいいなと思ってますね。

──大山さんは普段どういう環境で視聴されていますか?

大山 : MacBookのiTunesでMP3かAACを鳴らして、ワイヤレスでスピーカーに飛ばしてます。今のところ自宅にハイレゾのリスニング環境はないですね。

──卓也さんがハイレゾに行き着かなかったのは何故だと思いますか?

大山 : やっぱりまだカタログがそんなに多くないからですかね。確かにハイレゾの音源を聴くと「すごい!」と思うんですけど、それが自分の中の価値として一番というわけでもないから。音がすごく良くてもアルバム1枚で容量1GBになっちゃうなら、音質はそこそこでもいいから使い勝手がいいほうを選んでしまうというか。

──卓也さんにとって一番望ましい視聴環境って何ですか?

大山 : MP3がちょうどいいかな。こんな話、しない方がいいですよね?

──大丈夫ですよ(笑)。ちゃんとリアルな話の方が、我々も訊きたいです。

大山 : 音楽を聴くときに何を優先するかを考えると、手軽さとか使い勝手をチョイスする場面が自分の生活の中では多いかもしれない。もちろんじっくり腰を据えて「今日は良い音でこれを聴くぞ!」みたいな日もありますし。

──どんな作品だったら卓也さんはハイレゾで買いますか?

大山 : どうだろう。作品じゃないのかもしれないですね。あるときはイヤホンで聴きながら、そのとき見ている景色が音楽をもっと感動的に聴かせてくれるのかもしれないし、あるときはハイレゾで浮かび上がってくるその音の形とか音の粒みたいのが感動を増してくれるのかもしれない。

──なるほど。

大山 : だから一概にこれっていうことはできない気がしています。もしかしたら同じ音源でもハイレゾで聴くよりもっとグチャグチャの変な音で聴いた方がグッとくる場面もあるのかもしれないし、それも含めて自分の気分に合ったチョイスができる選択肢の多さがあるといい。CDでもアナログでもカセットでもいいのかもしれないけど、やっぱりどれかしかないのは嫌ですね。その時の気分で腰据えて正座してスピーカーの前で聴きたい時もあれば、散歩しながらヘッドフォンで聴きたいときもあるから。

──ちょっと早いんですけど、今年のベスト・アルバムって何ですか?

大山 : サニーデイ・サービスの『DANCE TO YOU』がよかったです。今年一番聴いたアルバムだと思います。

──凄い作品ですよね。

大山 : 大袈裟じゃない、押し付けがましくないのに感動的で。でも1枚を選ぶのって難しいですよね。

──そうですよね。ナタリーの代表として音楽産業に関わる中で、音楽産業はどんな年だったと思いますか?

大山 : 選択肢がストリーミングサービスも含めて出揃った感じがします。アナログの盛り上がりもさらに高まってるような気もするし、CDも現役だし、カセットテープの再評価みたいなことまで起こっている。ハイレゾも益々普及し続けてるし。だから多様性の年。聴きたいように聴けばいいんじゃない? っていうことがすごく肌感覚でみんなに伝わった年なのかなという気がします。

──情報の方はどうでしょうか。僕は皆が情報をゲットする形も変わりつつあるのかなと思っていたりするんですけれども。

大山 : YouTubeはすっかり定着しましたよね。

──プロモーション・ツールの一番はもうYouTubeになりましたね。

大山 : そう。YouTubeこそが主戦場というか、メインのメディアになってるような印象がありますよね。今、新曲を最初に聴くのはラジオでもCDでもなくYouTubeというケースが多い気がします。

──先ほど多様性や選択肢があればいいとおっしゃっていましたが、それ以外でハイレゾに期待することはありますか?

大山 : レコーディング・スタジオで鳴ってる音にすごく近い、またはそのままの形で受け手まで届くっていうのは、受け手にとってもいいことだし、作り手にとってもきっといいんじゃないかと思うんです。作り手側も、「ハイレゾで聴いてもらえるならこの音も入れよう、こんな曲にしよう」みたいに創作欲が刺激される部分があるのかなと思って。ありますよね、きっとそういうこと。

──あります。それこそ今回のAkiyoshi Yasudaはハイレゾ用のマスタリングをして、ミックスを変えてます。

大山 : そこにはすごく可能性を感じますよね。ハイレゾだけが唯一解というわけじゃないとは思うんですけど、ハイレゾだからこそ生まれる曲とか演奏とかっていうものが聴けるようになるんだったら凄くいいことだなと思いますね。

(Interview by 飯田仁一郎)

■今回、大山卓也が選出に使用したリスング環境■
USB-DACに、Pioneer U-05(写真左)、ヘッドホンはPioneer SE-Master1(写真2)を直接接続して使用(画像は使用イメージ)。
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Pioneer U-05
http://jp.pioneer-audiovisual.com/components/usb_dac/u-05/

Pioneer SE-Master1
http://pioneer-headphones.com/japanese/se-master1/

Sony MDR-Z7

プロフィール

大山卓也
1971年7月25日、北海道札幌市生まれ。北海道大学文学部卒業。大学卒業後に日本マクドナルドに就職、その後、株式会社メディアワークス(現KADOKAWA)にて7年間雑誌・webの編集を手がける。その後フリーランスの編集者としての活動を経て、2005年に代表取締役として音楽ニュースサイト「ナタリー」などを運営する株式会社ナターシャを設立。

http://natalie.mu/