2017年3月度最優秀ハイレゾ音源大賞作品

01_rbe

『HIT(24bit/48kHz)』
三浦大知

配信日

2017年3月22日

配信ページ

http://recochoku.jp/album/A1006352338/

 三浦大知、ハイレゾ音源大賞受賞動画コメント

吉田尚記

%e5%9d%82%e6%9c%ac%e9%be%8d%e4%b8%80%e3%82%a2%e3%83%bc%e5%86%99

 

2017年3月各社ハイレゾ推薦作品

 

ハイレゾの良いところって聴き疲れしないところだと思うんですよ

_8104050

──吉田さんの自宅のオーディオ環境について教えてもらえますか?

吉田尚記(以下:吉田) : けっこうマニアックな感じです。10年くらい前にセットしたままで。富士通テンが現行モデルになっちゃったんですけど、卵型の、コーン一発型フルレンジのやつで。僕、低音が全然いらないなと思っていて。嫌いじゃないんですけど、圧倒的に他のことができなくなるというか、音楽に支配される感じがして。もちろん低音が好きな人がいるのはわかるんですけど、むしろ聴き疲れちゃうというか。その辺の話で言うと、ハイレゾの良いところって聴き疲れしないところだと思うんですよ。

──なるほど、確かに。

吉田 : みんな、音の味が濃いんじゃないの? みたいなことを言うと思うんですけど、逆な気がしていて。普通のハイレゾじゃない音源だと、聴くときに粗いところを自分の脳内で補完してる気がするんですよ。それがハイレゾだと脳内補完しないで、オーディオからす〜っと聴けるというか。なんでそんなに聴き疲れを気にしているのか自分でもわからないですけど(笑)。

──ははははは。けっこうハイレゾは買っていたんですか?

吉田 : ダウンロードでも買っていますし、昔はSACDも何十枚か買っています。僕はアニソンDJをやっているので、可能な限り良い音の方が、自分で聴くにも人に聴かせるにもいいじゃないかっていうのが最大の理由ですね。

──アニソンのハイレゾってすごく需要があるんですよ。アニソン好きの代表として、それはなぜだと思いますか?

吉田 : 音の要素がすし詰めみたいなアーティストがアニソンには多いんですよ。僕はアニソンがなぜ流行っているのかって 訊かれて考えたんですが、結論が1つだけあって、アニソンって90秒バージョンが絶対存在するんですけど。それは音楽の流通革命だと思うんですよね。例えばラジオの場合、90秒の音源ってめっちゃかけやすいんですよ。90秒という聞き手にとって効率的な時間制限の中にドラマを入れ込んで楽しませるために、歌詞の密度もすごいし、帯域いっぱいにいろんな音の要素を入れて楽しませることも必要なので、アニソンってハイレゾ向きなのかなっていう気がしますね。

──今日は訊いてみたかったんですけど、ラジオでの音の良さの追求っていうのは、どこかで行われていたりするものなんですか? 例えばハイレゾだけがかかるラジオみたいなものって現状は無理ですよね。

吉田 : そうですね、やっても伝送路がそれに耐えられないというか。

──ハイレゾに限らず、その伝送路みたいなものをもっと良い音にするんだとかっていう動きはラジオの世界ではあったりするんですか?

吉田 : AM波がワイドFM化したのはその動きの一つかもしれません。FMって意外なほどに音が良いんですよ。今radikoが出てきてますけど、 radikoはデータ量が小さい、というメリットがある分、音源としては圧縮されてしまっているのですが、でもFMで聴くと、それこそ自宅のCDプレイヤーがそんなに良くない人なら、業務用のプレイヤーから再生した音はFM波を経由した音でも、ローカルで聞くよりいい音に感じることもあります。何より音のプロのミキサーさんが間に入っていますから。

──なるほど、ちゃんとセッティングされて全力で良い音を出すというところは、常にトライしているということですね。

吉田 : トライは間違いなくしています。同時に、ラジオは聞き流してもらいたいので。24時間ずっとつけといてもらっていいんだけどなって、つくづく思っているんですけど、なかなかそうならないなって。ちなみにこれも持論なんですけど、この前「SXSW」に行ってきたんですけど、やっぱりラジオってアメリカではすごく聴かれているんですよね。NHKの放送文化研究所のデータであるんですけど、 1週間で5分以上ラジオを聴く人のパーセンテージは日本で37%なんですけど、アメリカ・イギリスで90%で、他の国でも70%を下回る国ってほとんどなくて。じつは世界で一番ラジオが聴かれていない可能性があるんですよ、日本って。

──それはどうしてなんでしょう?

吉田 : なんでなのかがわかってたら、僕らがもっと上げられるんですけど(笑)。ただ僕らの怠慢だって正直思うんです。ラジオマンがやるべき何かをやっていないんだと思うんですね。だから、逆に言うとラジオは成長産業なんだろうと思うんですよ。これだけ伸びしろがあるのにまだやっていないんだから、何かやれば伸びる可能性があると思うんです。アメリカとかイギリスだと、「好きな歌手誰?」って聞くのと同じ感覚で「好きなラジオDJだれ?」っていう質問が成立するそうですし、ラジオってテレビ登場以降「10年後にはなくなる」って70年間言われ続けてるメディアなんですよ。でもなくならないんですよね。だからその可能性をもっと掘らなきゃって、それが今ラジオについて思うことですね。

_8104050

──では、各サイトが選出したハイレゾ音源についての感想を教えてもらえますか? まずはKEYTALK「PARADISE」から。

吉田 : KEYTALKはよくうちの番組にも来てくれるんですけど、彼らのすごさは“圧倒的な飽きなさ”というか、2つの意味で飽きなくて。ひとつはソングライターが4人いるので、アルバム1枚聴いてもまるで同じ曲がないんですよね。17曲入ってまるで飽きないっていうのはすごいなって。もう1つは本人たちに飽きを感じないんです。アルバムって2、3枚目になると飽きてそうな人たちもいる中で、KEYTALKはまるで飽きてないなこの人たちって思う。彼らの原点とほぼ同じことをやっているような気がするんですけど、それに本人たちが飽きないこともとても良いことだなと思っていて、問答無用にいいなって思います。ラジオで聴くと、ヴォーカルが2人いることをわからない人もいると思うんですよ。でもハイレゾで聴くと「ああ、こういうことをやってるんだ」っていうことが楽しんでもらえそうな気がします。

──続いて、高木正勝「YMENE」はいかがですか?

吉田 : 高木正勝さんは今回初めて聴かせて頂きましたけど、音楽ってこういうことをやってもいいよねっていうか。僕はピアノについて深く考えたことがないんですけど、これを聴いたときに「ピアノって打楽器なんだ」って思ったんです。ピアノが打撃音でできているんだっていう感じを受けるんですよ。ということは、打撃は強くも弱くもできるし、その間の階層がすごくあるんだっていうことに初めて気付きました。ピアノってこうなんだなっていう。しかもこれ、ライヴ音源だっていうのがビックリしたんですけど。聴いたときは、良い意味でライヴだってわからなかったです。「ライブなんだ、これ!?」って驚きました。

──彼はどちらかというと演劇的なスタンスでステージを最終目標として色んなことをやっていて「この完成したステージをそのまま録音してほしい」という人なので、意図的だそうです。

吉田 : なるほど、すごいですね。

──次はローラ・マーリン「Semper Femina」です。

吉田 : まったく初めて聴くアーティストなんですけど、顔も知らないままに聴いてみて、じつは若かったことに驚いて。26歳なんだ!?って。このアルバムを聴いていたときに、かけっぱなしにして部屋からいったん出たんですよ。そのときに無意識に「生音が流れてる」って思ったんです。そういうことってCDを聴いているときに思ったことがないなって。ハイレゾだと何回か感じたことがあって、この作品もそう感じました。

──TOWA TEI「Brand Nu Emo/Brocante
はどうでしょう。

吉田 : 新しいような古いような不思議な感覚でした。「聴いたことはよく考えたらないんだけど、でも聴いたことあるぞ」っていう感覚なんですよね。それを自分より年上の人がやっていることがすごいというか(笑)。僕はじつは年齢が上の人ほど過激じゃないといけないんじゃないかと思っていて。聴いたことがあるようなものが世の中にいっぱいあるはずじゃないですか? でもクリエーターをやっていたら、何か新しいものを創りたいと思うのが普通だと思うんですよね。この作品は、商売のために昔やっていたことを繰り返している人がいるのとは全く逆のことをやってるなって。これ、TOWA TEIファンに向けてないと思うんですよ。そんな感じはしました。でもどこかの時代に発生したTOWA TEIさんのオリジナル感とはリンクしていると思ったので、音的にはまるで聴いたことがない新しい音が鳴っている感じがしていて。それはもしかして正しい意味で過激なプロが、「ハイレゾだったらこれができるんじゃない?」って思ってやってるのかなっていう気がしました。

──最後は三浦大知「HIT」です。

吉田 : 三浦大知くんはライヴで何度か観たことがあって、「本当にすげえなと。ダンスも歌も両方、シルクドソレイユを観たときの感動の仕方と同じで「人間ってこんなことができるんだ」っていう感じ。でもそういえば音源をちゃんと聴いたことがないなって思って聴いたんですけど、「うわっすげえ」って本気で思いました。なんとなく電子音ってハイレゾで聴く意味あるのかなっていうのが自分の頭のどこかであったんですけど、聴いたら全然違うなって。エレクトロをめちゃくちゃ使っているんですけど、むしろそっちの方がハイレゾの意味あるかもって思いました。聴いたことがない音がうねりのようにグイグイ来るっていう。一方で、中に出てくるギターの音とかもめちゃくちゃ良いんですよね。1曲目のド頭に出てきたギターの音が鳴った瞬間にそう感じて。ライヴのときも歌が上手いと思ったんですけど、改めて歌がめちゃくちゃ上手いなって。今回、ハイレゾで聴いて一番「おおっ!」って思ったのは、三浦大知くんでした。圧倒的に良かったです。

(Interview by 飯田仁一郎 / Photo by 大橋祐希)

■今回、選出に使用したリスング環境■

デジタル・オーディオ・プレイヤー

Astell&Kern AK300

AK300

http://www.iriver.jp/products/product_133.php

ヘッドフォン

SONY MDR-1A

MDR-1A_B

http://www.sony.jp/headphone/products/MDR-1A/

プロフィール

吉田尚記

ニッポン放送アナウンサー。
1975年12月12日東京都生まれ。
慶應義塾大学卒業後、1999年ニッポン放送入社。
入社以来、「オールナイトニッポン」などニッポン放送のヤングタイム番組を中心に担当。
2011年度「第49回ギャラクシー賞」 」において「DJパーソナリティ賞」を受賞。
現在は毎週月曜日から木曜日深夜24時から放送中のワイド番組『ミューコミ+プラス』を担当中。
twitterの公式サイト「ツイナビ」が公認した「日本初のtwitter公認アナウンサー」であり、 twitterアカウント : yoshidahisanori は、14万を超えるフォロワーを得ている。
放送業界で1、2を争うオタクとして有名であり、年間100本以上のイベント司会や、ニコ生やTV番組への出演、2008年から始まった「マンガ大賞」の発起人・実行委員を務めるなど、ラジオにとどまらない活動を行っている。
2010年には、初の著書「ツイッターってラジオだ!」(講談社)を発売し、話題に。
2015年には、著作第2弾「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」(太田出版)を発売。
発売から3ヶ月あまりで、発行部数累計10万部を超える大ヒット作になった。

吉田尚記公式ツイッター
https://twitter.com/yoshidahisanori