Gotch (後藤正文)

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2017年5月各社ハイレゾ推薦作品

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Yogee New Waves

2014年春「CLIMAX NIGHT e.p.」のデビュー時、シティ・ポップ・サウンドの再来と評され、新たなシーンを切り開く存在として今のこのムーブメントの先駆けとなり夜明けとなったバンドYogee New Waves。2ndアルバムついに登場!

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【配信ページ】
http://ototoy.jp/_/default/p/75126

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RCサクセション

1983年ハワイで録音されたRCサクセション中期の傑作。ビンテージ海外機材で録音されたこの作品のアナログマスターは、デジタル録音のように周波数やビットレートに限界がなく、ハイレゾ素材にはまさに最適。

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1980年、日本人ジャズ・ミュージシャンとしては初めて日本武道館でコンサートを行った渡辺貞夫が、2016年12月渋谷オーチャードホールで36年ぶりに、70年代後半から80年代前半にかけて数々の渡辺のアルバムをプロデュースしてきた巨匠デイヴ・グルーシンと再演したライブ・アルバム。

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これからは、ストリーミングとハイレゾとLPになっていくような気がして

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──Gotchさんは普段どんな視聴環境で音楽を聴かれるのですか?

Gotch : 自宅だとLPが多いですね。スタジオだとLPもCDもなんでも聴けて、家だとパソコンの音源もLPも同じコンポに出してから、スピーカーで聴いています。

──スピーカー派なんですね。

Gotch : そうですね。朝晩は仕方ないのでヘッドホンをします。

──スピーカーで聴く理由はありますか?

Gotch : 音をあまり近くで聴くと、揺れている空気が少ない気がするんです。イヤホンは特に。最近の音楽って割とそういった聴かれ方を想定して作られていることはわかっているんですけど、自分は外の車の音とかがときどき混じってくるくらいのほうが、音楽を聴くとき疲れないで済むというか。

──アジカンにしてもGotchバンドにしても、作る方の側としては、リスナーにヘッドホンやイヤホンで聴かれることは気にしているのでしょうか。

Gotch : ミックスのチェックのときとかに、そういうことを最近、僕はほとんどしません。よっぽど気になったらするくらいで。

──録り終わったら、その後はほぼ完成版を聴く感じなんですか?

Gotch : そうですね、スタジオでパッと聴いて。ただ、ミックスが終わって自宅に戻ってから、もう一度ヘッドホンを使ってQuickTimeで聴いたりします。どう聴こえているかなって。でも大体そこまでいったらもう一回直したいというより、受け入れちゃいますね。ソロではアナログのコンソールを使ったミックスが気に入っていて、リコールできないかたちで落とすので、再現性がないことが多いんですよ。1回きりの、そのとき良いと思った感じを受け入れます。人によって再生環境はまちまちなので、スタジオで良かった瞬間を信じたほうがいいかなって。

──あんまり小手先でやらないようにしているんですね。

Gotch : 気分とか環境で変えるとキリがないような気もしていて。

──今は配信でハイレゾが出てきて、ストリーミングが日本でもはじまって、アナログもまた復旧しているなかで、音楽メディアについてGotchさんは今どういう風に考えていますか?

Gotch : 選択肢がたくさんあったほうがいいと思っています。でも音が良いことに越したことはないから、ハイレゾは特に良いなと思います。ロックのフォーマットだと、どうしてもレコードにしても良くないことが多いんですよ。特に歪んだギターのコードストロークでたくさんの弦を鳴らした音って、レコードだとそんなに良くないというか、CDで聴いたほうがはっきりと音の角があったりして。アナログのLPに一回彫ることで丸みを帯びちゃうのが必ずしも良いとは言い切れないので。そう考えると今回聴かせてもらった音源もギターの音とか、ハイレゾの方が解像度高いなと思うこともあるし。それはもうほとんど趣味の問題になってくると思うんですけど、なるべく選択肢がたくさんあることは豊かな証拠だという気がします。

──ストリーミングについてはどのように考えていますか?

Gotch : ストリーミング、僕はいいと思います。これはもう抗えない感じもあると思いますけど、ポップ・ミュージックって基本的には大衆音楽で、みんなのもので、産業になる前は歌いあったり演奏しあって、権利とは関係ないところで広く共有されていたものなので、そこに立ち返る、シェアっていう意味ではすごく良いなと思います。とはいえ、2億回とか再生されないと収入としてはキツイという現状もあるなか、どう捉えていくかは難しいんですけれど。自分の使い方としては、新譜が出たときに一旦ストリーミングで聴いてみて、これはじっくり時間をかけて聴いてみたいなっていう作品に関しては、まずはLPを探して、なければハイレゾを買ったりします。坂本(龍一)さんの今回のアルバムもOTOTOYで買いましたもん。

──それはありがとうございます。

Gotch : 早く聴きたかったんですけど、LPが発売延期になって。かといってこの音楽をストリーミングで聴くのもちょっと違うよなっていう。すごく気をつかってレコーディングして、良い音像で録ろうとして作られた作品をストリーミングで聴くというのは、ずっとぼかしの入った画面で映画をみるような感じというか。それはさすがに自分の鑑賞態度として問題があると思ったから、より良い音で聴きたいなと思ってハイレゾで買いました。使い方次第だと思うんですけどね。でも、自分たちが学生の頃って本当にお金がなかったから、そういう子たちに新譜も旧譜も山ほどの作品がフラットにある今の時代に、全部買って聴けよとは言えない。だからミュージシャンとしては、どうやって手にとって残しておきたいものを作るか、あるいは一点モノにするか、みたいな問いが立ち上がってる。ストリーミングの良し悪しについて、リスナーは一切考えないでいいと思うんですよ。作って発表して飯を食おうと思っているこっちの側が死ぬほど考えないといけない問題であって。聴く側は、あるものは全部使って楽しくやってくれたらそれでいいと僕は思うんですけどね。

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──では、本題に入ります。まず、トニー・アレンによるアート・ブレイキーのトリビュート作品『A Tribute To Art Blakey And The Jazz Messengers(24bit/96kHz)』について、いかがだったでしょうか。

Gotch : 音が良いですね。音が良い、演奏が良い、こういうスタンダードなジャズって良いなって思いました。鮮やかな感じがしてハイレゾに合っているなって。聴いていてものすごくドキドキしました。

──GotchバンドをBillboardで観させてもらったときの印象が強いので、なんかトニー・アレンと対バンしていてもおかしくないんじゃないかって思ったんです。ジャンルが違っても目指しているところが一緒な気がするなって思いました。

Gotch : ありがとうございます。これはとにかく音が良くて、人間の演奏であることも豊かに伝わってきて。これはもうハイレゾじゃないと聴けない素晴らしい音源だと思いました。

──次は若手のYogee New Waves『WAVES(24bit/48kHz)』ですが、いかがですか。

Gotch : この順で聴いたから、トニー・アレンの次で聴くと若干録音や音響については劣っている感じがしますね。相対的に聴いちゃうのは良くないことなんだけど、並べちゃうと差が出るよねっていうのがハイレゾの特徴かなと思いました。若干ダイナミクスが潰れているというか、もう少し広くてもいいかなという曲もあったり。もちろん、それが映えている曲もあったり。全体において僕はYogee New Waves大好きだけど、この並びで聴くと音像的には少し物足りないというか。曲はとにかく素晴らしいです。

──Yogee New WavesやD.A.N.とかの、ここ2、3年で出てきた若い人たちのことをGotchさんは注目していますか?

Gotch : 好きですよ。Yogeeは本当に素晴らしいと思います。日本語だし、今回RCサクセションも並んでいるけど、僕は角舘くんの立ち居振る舞いや演奏する姿を見ていると、(忌野)清志郎さんのことがよぎります。

──すごい!それは角舘(健悟)くんはめっちゃ嬉しいでしょうね。

Gotch : カリスマっていったら失礼かもしれないけど、背負って担っていく人になっていくような気がします。インディーとかメジャーとか問わずに、このディケードの後半のアイコンを担っていく1人なんじゃないかって。

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──では、次はそのRCサクセション『OK』。1983年の古い作品ですけども。

Gotch : これも音はすごく良かったと思います。楽曲はもちろんいいですし、こうやって改めてRCサクセションの楽曲を良い音で聴くことがなかったので、面白かったです。意外とミニマルなビートで、トライバルなフィーリングがこんなににも入っているのかって。ちゃんと気をつけて聴いたことがなかったので、自分が思っているよりも広がりのある音楽だったんだなって思いました。

──僕も全く同じことを思いました。久々に聴くとすごい発見があるなって。

Gotch : そう思いました。自分たちが思っているよりもRCサクセションって広いバック・グラウンドからこれを抽出していて。言葉選びにちゃんとユーモアがあって、ふざけてていいなと思いました。いわゆる反権力的なイメージを持たれがちなんですけど、ものすごくしなやかでユーモアのある言葉というか、笑かしてやろうみたいな意気も感じますよね。豊かな音楽だなと思いました。

──続いてRyu Matsuyama『Leave, slowly(24bit/96kHz)』です。

Gotch : 割といちばん最近っぽい音だなと思いました。ただ、かっこいいし、とてもよくできているんだけど、僕にはよくわからないというか。今っぽいフィーリングが伝わってくるんですけど、もう一息、彼らならではの記名性があると嬉しいかなって。経歴も変わっているし、この後どうなっていくのかなっていうのが楽しみですね。

──次は渡辺貞夫『アンコール!(24bit/96kHz)』です。

Gotch : ライヴ盤はハイレゾとすごく相性がいいんだなって思いました。もちろんライヴのDVDってCDよりは音が良いわけで、Blu-rayとかで観ているのと同じように音が良いし、臨場感もありますし。自分の好きなアーティストのライヴ盤がハイレゾであったら買っちゃうかなってこれを聴いたら思います。もちろん演奏は素晴らしいと思いましたし、ライヴ盤とハイレゾの相性っていいんだなと思いました。

──では最後は、ダイアナ・クラール『ターン・アップ・ザ・クワイエット(24bit/192kHz)』です。

Gotch : 音数が少ないのでハイレゾに合っているというか、ジャズってやっぱりハイレゾとの親和性があると思いました。聴いている人たちの音響への趣味やこだわりと相まって、良い作品が発売されるし、伸びていくというか、ロックよりも対応が早いのかなと思いながら聴いたんですけれど。でも、ちょっと古く感じてしまって… 悪くはないけどスタンダードすぎちゃって、あまり刺激はなかったですけど、音は本当にびっくりするくらい良いですね。

──もっとロックの人たちもハイレゾを出して欲しいなと思います。

Gotch : そうなってくると、録り方も考えないといけないな、と思いました。自分の音でもそれは悩みですけどね。ジャズ周辺の演奏や録音の技術に張り合おうと思ったら大変です。HIP-HOPの音源も、最近は悪くはないけど良くはないみたいな、嘘みたいな音質のサンプリングで作ったトラックで、ラップだけめちゃくちゃ良い音で乗っている作品とか多いですよね。

──そしてそれがかっこよかったりしますもんね。

Gotch : そうなんですよ。チープな音のかっこよさもあるので、何がいいかなんて、なんとも言えないんですけど。

──そういう意味ではジャズは合いますよね。

Gotch : 合いますね。演奏のうまい人のプレイを良い音で聴くのって幸せですよね。

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──では5月のハイレゾ音源大賞を1枚選んでください。

Gotch : 一番良かったのは、e-onkyo推薦のトニー・アレン『A Tribute To Art Blakey And The Jazz Messengers(24bit/96kHz)』ですね。

──選考のいちばんのキーになったのはどういう部分でしょうか?

Gotch : 演奏が良いことと、音が良いことですね。作品も好きだし、さらに音も良いとなると敵わないなと。普段の僕の趣味でいったらYogeeの音楽が好きなんだけど、トニー・アレンの演奏をこの音で聴かされちゃったら、さすがにどれだけ贔屓目で見てもYogeeにあげられない。逆に同じ音質でYogeeがアルバムを録ったら、ひっくり返る可能性はもちろんあるわけで。面白いなと思います。

──ありがとうございます。Gotchさんは今後もハイレゾに積極的にトライしていく感じですか?

Gotch : そうですね。基本的にはこれからは、ストリーミングとハイレゾとLPになっていくような気がして。CDがなくなることはないだろうけれど、少しずつ衰退していくかもしれないなと思っています。メディアの問題は難しいですけどね。MP3を買うくらいならストリーミングでいいと思うし。そこを思い切ってみんながときどき良い焼肉屋に行くみたいに、ハイレゾ音源を聴いてくれたらいいなと思うんですけど。

──Gotchさんも本当に音にこだわる人なので、坂本(龍一)さんに負けず劣らずと……。

Gotch : いやいや負けますよ、そりゃ(笑)。

──今作が凄すぎたんでね(笑)。あのような作品(『async』)が出てくるとは思わなかったですよね。

Gotch : そうですね。思想も含めて、かなり進んでいますからね。

──圧巻でした。あれはポップ・ミュージックなのか?と何回も思いました。

Gotch : ほとんど現代音楽なんじゃないかと思います、やっぱり。芸術の領域ですよね。 そう考えるとCorneliusの「いつかどこで」は別の角度から凄みが際立ってきますね。ポップミュージックに落とすんですから。

──すごいですもんね。

Gotch : 日本が世界に誇る天才2人って感じじゃないですか。いやになっちゃいますね(笑)。

Interview / 飯田仁一郎
Photo / 大橋祐希

ヘアメイク / Hair & Make-Up
藤岡ちせ / Chise Fujioka [Paja*Pati]

スタイリスト / Stylist
岡部みな子 / Minaco Okabe

衣装協力
VAIOUS/SOCS JAPAN 03-5823-0201
FREAK’S STORE渋谷 03-6415-7728

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プロフィール

Gotch

後藤正文。1976年静岡県生まれ。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。

Gotchオフィシャル・サイト
http://gotch.info/