DJやついいちろう (エレキコミック)

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2017年6月各社ハイレゾ推薦作品

ハイレゾで聴くと、空間が丸い感じがしました。ハイレゾは3Dというか立体的な音

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──やついさんは普段どんな視聴環境で音楽を聴かれるのですか?

やついいちろう(以下、やつい) : ステレオがあるのでCDが多かったんですけど、最近は定額ストリーミングの音楽をスマホでヘッドフォンで聴いていることが多いですね。あとは移動で車に乗っているときにBluetoothで繋いで聴いたりとか。新譜が死ぬほど聴けますからね。新譜をとりあえず、興味の有無に関わらず全部聴きます。オススメされているものを1曲ずつ。

──音楽を聴き始めた原体験ってどんなものなのでしょうか。

やつい : 一番初めのレコードは、幼稚園のときに買ったイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」と近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」。原体験としたらその2枚ですね。「ハイスクールララバイ」は作詞が松本隆、作曲・編曲が細野晴臣ではっぴいえんどサウンドですよね。いや、違うか、YMOサウンドか。歌謡曲というか、みんなが好きな音楽を買ったんです。そういう部分は今もあると思うんですけど、それから中高生くらいには年齢的にもちょうどマンチェスターブーム、ニルヴァーナ、グランジブームとかブリットポップを聴いたりっていう、ロックが全盛の頃にどっぷりハマって、その後日本の音楽シーンに戻ってきたみたいな。ネオアコを1回あらかた聴いて、その後サニーデイ・サービスを聴いて、日本のフォーク系のものを聴いてはっぴいえんどを聴いて。それでDJを始めたのでみんなが盛り上がるものを聴くようになって。J-POP・ロックのフェスに出ることが多いので、そういう人たちが聴く音楽を聴くようになった、という流れですね。でも根底では洋楽とか日本以外のロック、EDMも聴きますし、ポピュラーソング的なものも聴きますし。アフリカのロックとか、そのまんまの民族音楽ではないものを聴いたりとか。そこまでリーチを広げるとお金がかかってしょうがなかったものが今や、定額ストリーミングで死ぬほど聴けるじゃないですか? それで良いなと思ったものはラジオで紹介したりとか。月にラジオで50曲くらい選曲しているんですよ。それでかぶらないようにしないといけないし、ある程度新しいものを紹介するような役回りでもあるので、色々聴いております。

──DLとかよりも、結構、ストリーミングがズバッときた感じなんですね。

やつい : 僕は思いっきりそっちを享受していますね。とにかく、新しいものをたくさん聴きたいんですよ。それには最高ですよね。それで本当に気に入ったものを買えば良いと思っているので。

──それはApple Music? Spotify?

やついいちろう(以下、やつい) : Apple Musicと、仕事の関係でKKBOXを使ったりしています。Apple Musicで聴くようになって、邦楽離れが激しくなりましたね。もう、そこになきゃ聴かないみたいになっちゃってて、それは気を付けないとなって。Spotifyはまだ使っていないです。

──そんなストリーミングが大好きというやついさんが、ハイレゾを体験してみていかがですか?

やつい : 音が全然違いますよね。ハイレゾ自体は知ってますし聴いたことはありますけど、本当に音が気持ち良いですよね。僕は音の質感とかをこだわって聴くというのじゃない、音楽の楽しみ方をしていたんですけど、やっぱり音ってすごく良いにこしたことはないので。ヘッドフォンを高いものにするとかそういう部分ではやっていたけど、実際ハイレゾで聴くと、空間が丸い感じがしました。2Dなんですよね、ストリーミング・サービスの音って。でもハイレゾは3Dというか、立体的な音だから、「そりゃあこっちの方が良いよな」って思いますね。

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──では、各社ハイレゾ推薦作品を紹介していきたいと思います。音の良い悪いは1つの要素として考えて頂いて、やついさんが「音は良いと思わなかったけど、このアルバムは最高だ」っていうのであればそれで全然構わないです。

やつい : わかりました。まず、ザック・ギル『Life In The Multiverse(24bit/44kHz)』からいいですか。このアルバムは、これからの季節にピッタリでしたし、好きな音でした。まず、この顔。

──顔ですか(笑)。

やつい : このジャケを見たときに、「絶対良いだろうな」って思いました。もちろん音楽も大事なんですけど、バンドとかでもミュージシャンでも、顔が好きな人の音楽が好きなんですよ。顔を見て好きじゃない人の作品はだいたい良くないというか。あと、バンドもその写真が「なんかダセえな」と思ったら、たいてい音もダサい。顔がカッコイイというわけじゃないんだけど、ピタッときてるなっていうバンドはいて、それはたいてい良いっていうのがあるんですよね。ブルーハーツとか、今や当たり前だけど4人の写真を見たときに、なんとなくピタッときてるなって思うじゃないですか? ニルヴァーナとかも。この人は僕、全然知らないですけど、顔を見たときに良いなと思って、聴いてみたらやっぱり良かったです。まあ、ジャック・ジョンソン、ベン・ハーパー、Gラヴも好きだから当然好きなんですけど(笑)。声も良いし、気持ち良かったです。

──ザック・ギルは、やついさん的に気持ち良かったんですね。

やつい : でも、今回みんな気持ち良かったですけどね。CAN『Singles(24bit/44.1kHz)』は気持ち良いんだけど、ささくれているなあと思いましたね。僕が〈やついフェス〉で一番大事にしているのが“ささくれ”で。気持ち良く飲み込ませないようにしたいんですよね。気持ち良く飲み込ませるっていうことで、好きな渋みや苦みがなくなっていくと僕は思っていて。1万人、2万人を絶対に動員しないといけないという目標があるものであれば、それは“飲み心地”が大事だけど、そうじゃなくてある程度とっちらかってても売り切れるくらいのキャパでやってるんだから、飲みやすいものだけにしちゃうと意味がない気がしていて。だから、最初は不味い!って思うようなものを入れたいんです。だけど、本当の意味で不味いものは入れたくないから、その部分がむずかしいところなんですが… CANの作品にはそういうアティチュードみたいなものが、俺にも理解できるなって思いました。音自体は美しかったです。ただ飲みずらいだろうなとは思いましたけど(笑)。

──CANは〈やついフェス〉に出れる感じですか?

やつい : 出したいですね。かたや、とっても気持ち良い音楽の秦基博さん『All Time Best ハタモトヒロ(24bit/48kHz)』。秦さんとレキシの「年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生」という曲があるんですけど、そのPVに俺が秦基博役で出ていて。それに対して秦さんが「俺が出たかった」っておっしゃってて、それからちょっとギクシャクしてます(笑)。

──ははははは! そんなバカな。

やつい : ギクシャクはしてないけど(笑)。さも俺が秦さんのパートを歌っているかのように出ているんです。だから、「歌上手いんだね〜」って超言われるんですよ(笑)。歌ってるのは秦基博だって言ってるのに。どれだけ人間って音楽に興味がないんだって思いますけどね。「俺なわけないだろっ!」って(笑)。ただ、その誤解を生むっていうことは、興味がない人たちにも届いているっていうことだから、曲の力は末恐ろしいというか。ライヴに一緒に出させて頂いたりしたんですけど、すごくナチュラルなシンプルな方だったので。本当に音楽に関してもド直球な感じがしましたね。“逆CAN”というか(笑)。ストレートが速い感じというか。スポーツをやっていた方で、伸びやかなんですよね。本当に、アンダースローとかじゃなくて「右の本格派」で球が速い感じですね。メロディが良い、演奏が良い、ということじゃないですか。このアルバムもやっぱりそのタイプだと思いました。

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──次は反田恭平『月の光〜リサイタル・ピース第1集(24bit/96kHz)』です。

やつい : この方は全く知らなかったんですけど、気持ちが良いですよね。こういうシンプルな音を聴くと、やっぱりハイレゾがいいかもって思いました。逆に、ハイレゾで聴かないときはどうなんだろうって。ハイレゾで聴いているからこその、この包まれている感じが良いじゃないですか。臨場感というか。まさにこの音を、ハイレゾの売り場に並べるべきじゃないですかね。これしか入っていないハイレゾを並べて、それを聴いた人が買うっていう。ハイレゾを売るには一番良い作品なんじゃっていうくらい、ハイレゾ音源としてピタッとハマってました。

──DJ KRUSH『軌跡(24bit/48kHz)』はいかがですか。

やつい : 僕はTHA BLUE HERBが好きなんですけど、DJ KRUSHさんはTHA BLUE HERBをフックアップしたっていうイメージが強いんですよね。KRUSHさんがチョイスするものって、時代の中ではかなり早い段階で紹介している印象があったんですけど、そういう意味では偏見のない人だなっていうか。フェスをやってるとチョイスの連続なんですけど、やっぱりどうしたって見つけられてないものを見つけたいっていう気持ちってあるんですよね。でも、ロックフェスに出させてもらうことが多いんですけど、見つけられていないものを飲み込ませるっていうのは、ものすごく労力がいることなんですよね。これは僕の体感なんで違うかもしれないですけど、「聴いたことがないものは聴きたくない」くらいの雰囲気が漂ってる気がするんですよ、大きいフェスに行くと。知らないっていうことに関する冷たさが、まあ尋常じゃないというか(苦笑)。「知らないけど、いいなあ」って思っているのかもしれないけど、それが形として見えないから、そうなると「みんなの歌」的なものの連打になってくるというか。それはそれで楽しいけど、フェスもやっぱり同じことになっているような気がしちゃうんです。「この人は何千人、この人は何千人、足したら2万人、だからこれでいこう」っていう作り方になっちゃうというか。やっぱり年齢的に「この人知らなかったけどカッコイイな」っていうので音楽を勉強してきたっていうのがあるから、そういうものへの憧れってあるんですよ。僕は僕のやり方でチョイスはしていますけど、KRUSHさんが薦めるものとかこのアルバムに入っているものって、やっぱりカッチョイイなって思います。

──DJ的な感覚が、あたり前に入っているということですよね。

やつい : KRUSHさんって、“スッ”ってレコードを抜いているイメージがあって。そのチョイス、紹介するものがだいたい良いっていうイメージなんですよね。フラットに自分が良いものを紹介するという印象がKRUSHさんに対してあります。「こうあるべきだな、俺はまだできないけど」っていう気持ちになっちゃう(笑)。そういう意味ではすごくチョイスが信頼できる人だと思います。

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──では最後は大沢伸一のプロジェクトMONDO GROSSO『何度でも新しく生まれる(24bit/88.2kHz)』です。

やつい : MONDO GROSSOは普通に好きなアーティストですね。大沢さんは昔から聴いてます。今回もの凄く久しぶりにアルバムが出て、めちゃくちゃ良かったですね。これに関してもチョイス(様々なヴォーカリストが参加している)になると思うんですけど、聞いた話では大沢さんはこのチョイスに関して口を出さなかったというんですよね。

──そうなんですね!

やつい : それに対して僕は個人的にとてもシンパシーを感じたんです。MONDO GROSSOで大沢さんといえばかなりこだわりがあるイメージがあるし、サウンドクリエーターとして当然トップな方じゃないですか。その楽曲を歌うという意味では、birdさんとかUAさんとか、DIVAの方たちも出てますけど、満島ひかりさんに関しては、大沢さんじゃなくてスタッフが「この人とやったら良いんじゃないですか」って提案して、それに対してNOを言わなかったっていうんですよね。決めつけられないけど、乃木坂の方(齋藤飛鳥)もそうだと思うんです。僕なら、久しぶりのアルバムを出すときにそれができるかなって。「この人の声でやりたい」ということをこだわるんじゃないかと思うんですよ、普通は。でもそれを全部ではないにしろスタッフに投げちゃうという、それを受け入れてやってみるのって、大きい意味では大冒険だなって。

──なるほど.

やつい : だからこのアルバムは冒険や発見に溢れているし、かといって「満を持して」という感じもそこまでしないでサラッとしているから、とっても良いなと思いました。それは自分がそうなってきたっていうのもあるんですけどね。今までは「自分が好きなものしかやりたくない」っていう気持ちが強かったですけど、最近は人が「これをやったら良いんじゃないか」っていうことに対して、「じゃあそれでやってみようかな?」って思うようになってきていて。そういうのが自分と近いなって思ったんですよ。こだわりをことさら演出する、強調するっていうのに疲れちゃったというのもあるし、生きている上では当然誰もがこだわっているわけで、それなのにこだわりを強く演出する必要もないんじゃないかなって。人間なんて知ってることが少なくてほとんど知らないに等しいのに、そこで選ぶよりみんなが良いって言うものを入れた方が全然良いじゃんって思うようになってきたというか。人の才能も自分の才能だと思った方が良いなと思うんですよ。「俺はできないけど、歌を作るんだったらこの人に作ってもらったら絶対良いんじゃない」とか。「いや、俺は全部1人で作る」っていうこだわりはもう全くなくなりましたね。まさに大沢さんのこのアルバムはそういう作り方だと思うんですよ。ジャケットも切って貼ってるわけで、すごくそういう雰囲気が出てるし。もちろん、こだわってるとは思うんですけど、ことさらそれを言わなくても良いっていう感じが良かったなあ。

──では、この中から6月度のハイレゾ音源大賞を選んでください!

やつい : やっぱり、MONDO GROSSO『何度でも新しく生まれる(24bit/88.2kHz)』かなあ。なによりも、自分と近いものを感じたのが一番の理由です。

Interview / 飯田仁一郎
Photo / 大橋祐希

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プロフィール

DJやついいちろう(エレキコミック)

1997年エレキコミック結成。やついいちろうが音楽好き、相方の今立進が漫画好きだったことがコンビ名の由来。音楽好きで友人も多く、お笑い界一音楽業界に顔の広い(?)芸人とも言われている。
友人でもある曽我部恵一氏の勧めでDJを始め、2005年「COUNTDOWN JAPAN 05/06」DJブースにてフェスデビュー。以後、夏の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、冬の「COUNTDOWN JAPAN」にはゲストDJとして欠かさず出演。SNSやコミュニティ等でも「DJやついを見るために毎年フェスに行ってます!」「ベストアクト」との声も多い。エレキコミックとしての活動と平行し、音楽イベントのDJとしても全国を駆け回っている。
2005年には曽我部恵一氏のプロデュース・作曲でエレキコミックとして、オリジナルアルバム「エレベスト」発売。2009年にDJとしてCDデビュー、MIXCD「DJやついいちろう①」をリリース。続く「ATARASHII YATSU!」、「ゴールデン・ヒッツ」、「PLATINUM DISC」、「YATSUI FESTIVAL!」、「PARTY」、「Tropical Hour!!」と7枚のMIX CD、2016年には新録曲含めたベスト盤「YATSUI MATOME」をリリース、好評発売中。

DJやついいちろうオフィシャル・サイト
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A022595.html